counterintuitif’s diary

思い付きの整理・備忘と物書きのリハビリ用。脳髄の排泄物ともいう。

ヴィーガニズム雑感

最近何かと目にすることが多かったので思うところを。

 

ヴィーガニズムの”理論は”完璧だ。

「Plants tho 論法」に対する反駁をはじめとして、理論武装はカテキズムのように精密であり、同じディベートのリングに上がってまともに戦える相手ではない。

言うなれば純度100%の「理性の結晶」。

その理論には硫酸銅の澄み切った深い青色に比するような魅力がある。

 

しかし”現実的”には、「清流」に住める魚は限られている。

SNSなどをざっと見た印象で偏見を承知で申し上げると、ヴィーガニズムの活動家といった方たちは「都市」に住んでいて、「学歴が高く」、「比較的裕福な」、「余暇のある」方々ではないかと思う。

 

私は人口20万程度の地方に住んでいるが、自分の行動範囲にあるヴィーガンレストランは1軒だけだった。1軒存在するのだからまだいい方かもしれない。だが、スーパーには大豆ミートとかのヴィーガン食品は売ってない。当然、”ヴィーガンジェラート”などといった”オシャレな”食べ物など見たこともない。

 

活動家の方々はご存じないだろうが、世の中には「週休二日制」ではなく、「残業があって」、「肉体を酷使する」といった仕事がある。そんな仕事に従事する人間が、終業後クタクタになった頭と体で、さらに「倫理的に潔癖な自炊」のことを考える脳のメモリなど残されていない。それを「不可能ではない」とか、「簡単な」ことだと豪語できるのなら、それはあなたが「超人」だからある。豆腐ハンバーグを作る労力は、スーパーで30%OFFになったカツ丼を買うのには敵わない。

 

ヴィーガンは最低限の倫理であって「ライフスタイル」などではない、と活動家の方々は仰りたいかもしれない。だが、”それ”を実践するためにはそれなりの”資本”が必要なことを見落としていないだろうか。ヴィーガニズムからNYやLAの洗練された香りは感じても、ラストベルトの錆び付いた臭いは感じられない。

 

これが、ヴィーガニズムを広めるにあたって戦闘的な活動家の方々が陥っている盲点であると思う。真に普遍的なムーブメントになりえていないのだ。

 

だから、老婆心ながら一つ提案がある。

ヴィーガニズム活動家や賛同する人々で出資しあって、巨大ヴィーガン飲食店チェーンを全国に展開すればいいのである。ネットで肉食者を断罪するプロパガンダを撒き散らすよりよほど建設的だと思う。

思うにヴィーガン「活動家」という割には、「スーパーにヴィーガン食材を置け」とメールするだの、「消費者マインド」が強すぎる。だったら自分がプロダクターになればいいのである。マクドナルドや吉野家並みに当たり前に見られる光景になれば、私も必ず利用する。使用する食材も「契約栽培」で自分たちで管理すれば、猟友会を批判するような妄言も出てこなくなるだろう。

 

「啓蒙」から「経営」へ。

 

大事なのは肉食者を見下すことではなく、ヴィーガニズムのハードルを下げることなのだ。それができないから「いただきます教」の易行道に勝てないのである。